組織化・選択肢 ~佐藤 英行report~

プラクティショナーが 、月ごとに自分の感じていることやお知らせしたい情報などフェルデンクライスに関することを皆様にお届けしています。第86号ー2024年4月は佐藤英行がお届けします。

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フェルデンクライスでは、よく「組織化」という言葉が使われる。「持っている機能をより多く引き出して、行動の選択肢を増やすために、自分自身を組織化する」と言うヤツだ。しかしこれだけを聴いても、ピンと来ない人が多いのではないだろうか…⁇ そもそもなぜ選択肢を増やす必要があるのだろうか…⁇

人間の持つ最大の特性のひとつは「自らを組織化する能力がある」ということだ。人間は何もできない状態で生まれてくる。生まれてすぐに立ち上がり、動きまわることができる動物たちと比較すれば、人間の赤ちゃんが持っている能力は圧倒的に低い。動物たちは我々人間よりも、はるかに高度に組織化された機能を持って生まれてくるのだ。しかし動物たちはほとんど固定されたパターンで行動するので、彼らの組織化は固定されたものになる。新しい組織化を学習する余地がないのだ。結果として、その種の行動のテリトリーの外では生存するのが難しくなる。

それと比較して人間は、多くの機能が組織化されていない状態で生まれてくる。行動のシステムがパターン化されていないので、生きていく環境のなかで、ある程度の時間をかけて「行動を学習する」と言う組織化をしなければならない。その一方で、学習することによっていろいろな組織化が可能になるので、行動のテリトリーの外でも生存することができるのだ。

しかし我々の「学習して得られた組織化」は、個人の置かれた環境や学習の条件によって左右されてしまう。動物たちのような「固定された組織化」ではない。たとえばスポーツの面ではるかに高度な組織化を有しているアスリートたちでも、スポーツ以外の部分では不完全に組織化された状態が残っているのかもしれないのだ。「とりあえず一応は生活に困らない程度の組織化ができている」としても、それは動物たちの「高度な組織化」と比較すればまだまだ改善の余地が残されている可能性がある。そしてその不完全さのために、毎日の生活で不都合が生じてくる場合があるのも事実だ。

例えば、周囲の環境や条件が少し違ってしまうと、今までの組織化が通用しなくなることがある。そうなると今までと同じように行動することができなくなってしまう。その際に出てくる現象は人さまざまだ。ある人は身体のどこかに痛みが出るのかもしれない。また他の人は抑鬱や適応障害などのメンタルヘルスの障害が出現するのかもしれない。そうならないためにも、組織化の不完全な部分を見極めて「改善」する必要がある。その「改善」によって「少し違ってしまった環境」の元でも、今までと同じように行動することが可能になる。さらにそのときに得られた「改善」は、他のあらゆる組織化にも良い変化をもたらすことが期待できる。選択肢を増やすと言う事はそういうことなのだ。そのためのベストな方法として、フェルデンクライスメソッドは創られたのではないだろうか??。

特に大きなチャレンジをすることもなく、毎日静かに生活を送っていたとしても、ごく僅かだが変化は毎日起きている。そのごく僅かな変化に、いつの間にか圧倒されてしまわないためにも、フェルデンクライスメソッドを実践することは大きな意味を持つのである。

 

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フェルデンクライス プラクティショナー 佐藤英行

2024-04-30 | Posted in FK Tokyo 通信, ReportComments Closed 

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