Enjoy Being ~FIって???~

みなさんは「ナイトブレーン」という言葉を聞いたことがありますか? かつて「私たち人間は脳の10%しか使われていない」という説が「まことしやか」に認識されていました。そして使われていない残り90%の脳のことを「ナイトブレーン」と称していました。確か数年前の深夜枠のテレビドラマでも取り扱われていたので、ご存知の方も多いかもしれません。しかし実際には、私たちは脳細胞の、そのほぼすべてを使っているという研究結果が出ています。ほんの少しの損傷でも「障害」が出てしまうのです。

この言葉は、かのアインシュタインが残した「我々はその潜在能力の10%程度しか使っていない」という言葉が誤用された結果のようです。アインシュタインによれば、脳細胞を100%近く使っていても、日常生活を送るうえで、私たちは持ち合わせている能力の、せいぜい一割程度しか使っていないということになります。また、Dr.モーシェ・フェルデンクライスに言わせると「我々の自己イメージは、潜在能力よりも制限され、その可能性の5%しか使用していない。」と、なんとも手厳しい(?)言葉を、その著書に残しています。では、なぜ脳細胞を100%近く使っていても、こんな結果になるのでしょうか???

私たちには「自分が経験していない事柄や想像出来ない事柄は『存在しないもの』として捉えてしまう」という傾向があるようです。それは「物ごとの理解の仕方」だけてなく「考え方」や「価値判断」、「行動」や「身体の使い方」に至るまで、幅広く適応されるようです。さらに、私たちは基本的に「変化すること」をあまり望まない傾向があります。乱暴な言い方をすれば「昨日と同じ今日が来て、今日と同じ明日が来る」という変化のない状態を好みます。「変化がない」ことは退屈かもしれませんが、未経験なことや想像を絶することなどには手を出さずに「5%〜10%の能力」だけを使って毎日を送ることは、ある意味でとても楽なのです。残りの能力は「存在しないもの」として無視してしまっても「いつもの日常」を送ることが出来ます。しかし、もし何かの理由で「●●することが出来ない」「△△すると痛くなる」「××するのが、前よりもやりにくくなった」ということが起きてしまうと「何で???」ということになります。もしかしたら、残り90%の能力を使えば解決出来るのかもしれません。しかしその能力を「存在しないもの」として捉えて、僅か10%の能力の中で解決しようとしている限りは「私はどうしたらいいの???」の世界から脱することはできません。。。。

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私のクライアントさんになる方々は、多くの場合「身体の痛み」を訴えておられます。おそらく私のバックグラウンドが理学療法士・鍼灸師ということで「痛みをなんとかしてほしい」と思って訪れるのでしょう。医学的に確実に問題があるケースであれば、それを取り除く以外に方法はありません。しかし医療機関へ行っても「特に問題はありません」と言われてしまうケースもあります。そうなると「How To」の問題になります。つまり「どのようにしたら痛いのか?」ということ。「痛い動きや、痛みの出る身体の使い方を行わすに、目的のアクティビティを遂行できれば、そしてその方法を確立出来れば、今よりももっと楽になりますよ」ということです。そのためには、私たちが普段無視している「残り90%〜95%の能力」に目を向ける必要があります。そしてそれを具現化できるのがFI(Functional Integration:機能の統合)であると、私は考えています。

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以前、ある女性にFIを実施しているとき、その方の御主人が見学されていたことがありました。終わってから「見ているだけだと、何をしているのかよく分からないし、実際に自分がやってもらいたいとは全く思わないんですが、妻に言わせると、とても効果があるそうです。」とのコメントを頂きました。多くの場合、ボディーワーク系の施術をうけるとしたら「何かをやってもらえる」「何かを教えてもらえる」ということを期待するのかもしれません。しかしFIは、そのどちらでもありません。その人が本来持っている、でも自身では「無視」してしまっている「能力の残り90%」を見つけているだけなのです。ですから「新しい動き」を覚えてもらうわけでもなく、グリグリとマッサージするわけでもなく、筋肉をストレッチするわけでもありません。最初は「こんなんで良いの??」と思うかもしれません。しかし終わった後に「あれっ?なんか違う??」と思う変化を感じられることが少なくありません。

Dr.モーシェ・フェルデンクライスによると「FIは、我々のもっとも原始的な感覚器官に働きかける。皮膚へ『触れる』感覚、『押す・引く』と言った動きの感覚、手の暖かさ、呼吸の変化、皮膚への刺激による血流の改善など、普段はあまり意識されずに、忘れ去られてしまっている要素のすべてに働きかける。そのことにより、発育中の子供のような『健康な状態』を思い出すことが出来るようになる。」と説明しています。また「優れた能力がある者は『他の者よりも、より多くの能力をもっている』から優れているのではなく、『いま持っている能力の、より多くを使うとこが出来る』から優れているのである。」とも言っています。本来持っている、しかしそのことを忘れてしまっている「能力」を見つけ出し、それを使えるように引き出す。それこそFI=機能の統合の本来の目的です。

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どこかが痛くなったとき、今までスイスイと出来ていたことがやり難くなったとき、解決策を「外部」に求めるのもひとつの方法です。しかし、もしかしたら「最良の解決策」は、自分自身の中にあるのかも知れません。ぜひみなさんも、時には「残りの90%」に注意を向けてみて下さい。案外、答えは手の届くところにあるのかも知れません。。。

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フェルデンクライス・プラクティショナー 佐藤英行

2014-10-10 | Posted in FK Tokyo 通信, ReportComments Closed 

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