無意識の学び ~佐藤 英行report~
プラクティショナーが 、自分の感じていることやお知らせしたい情報などフェルデンクライスに関することを皆様にお届けしています。第95号ー2025年7月は佐藤 英行がお届けします。
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実際、我々は日常のなかで無数の刺激を受け取り、それに反応しながら生きている。たとえ特別に何かを学んでいる意識がなくても、我々の神経系は周囲の状況を吸収し、反応し、変化している。これは「無意識の学び」とも言うべき現象であり、その力は想像以上に強い。ゆえに、自らが身を置く環境には細心の注意を払う必要がある。どのような人々と関わり、どのような空間に身を浸しているのか―それは、我々自身を静かに、しかし確実に形作っていく。
同時に、我々自身もまた誰かの環境の一部として、影響を与えている存在である。たとえそのつもりがなかったとしても、意図せず誰かを傷つけたり、誤った方向に誘発してしまうこともあるかもしれない。だからこそ、自分という存在が及ぼす影響について、ある程度の責任を自覚しなければならない。
この「無意識の学び」が問題となるのは、主に否定的な結果として表れるときである。たとえば「毒親の子供は毒親になる」とか、「三つ子の魂百まで」といった言葉が示すように、子どもは家庭のなかで親の在り方を無意識に模倣し、自らの人格形成に組み込んでいく。いくら「親のようにはなりたくない」と強く思っていても、気づけば似たような言動を繰り返している―そんな話をよく耳にする。
このような「望まぬ模倣」は、時に本人の意志をも裏切る。自分ではなぜそのような考え方や行動をしてしまうのかが分からず、自己嫌悪に陥ることもある。無意識であるがゆえに、「自分が悪いわけではない」ということが、かえって問題を複雑にする。努力しても変わらない。決意を新たにしてみても変化がない。そんな苦しみの中に、長く留まってしまう人もいる。では、どうすればこの「無意識の学び」によって形成された自分を変えることができるのだろうか。
その一つの方法として、自分の置かれている環境を一度リセットし、「運動」「感情」「感覚」「思考」の4つの要素に改めて焦点を当てることが挙げられる。これは、身体的な反応も含めた「自分の反応のパターン」を見直すことであり、自分自身を構成している行動や思考の構造を、少しずつ書き換えていく試みである。
もちろん、これは時間のかかる作業であり、ときには自分でも見たくないような側面に直面することにもなるだろう。しかし、無理に頑張る必要はない。「楽しめる範囲」で、自分の反応に気づき、それを調整するプロセスを続けることで、人は少しずつ変化することができる。そうして初めて、自分自身の行動や思考をナビゲートする力を取り戻していけるのだ。











