変わりたい脳、変わりたくない脳 ~佐藤 英行report~
プラクティショナーが 、自分の感じていることやお知らせしたい情報などフェルデンクライスに関することを皆様にお届けしています。第99号ー2026年1月は佐藤 英行がお届けします。
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脳は基本的に変化を好まない。むしろ現状を維持しようとする性質を強くもっている。これは、変化に伴う不確実性やリスクを回避し、安全を確保しようとする生存本能によるものだ。心理学でいう「現状維持バイアス」も、こうした脳の働きに由来している。もう一つ重要なのは、エネルギーの問題である。脳は新しい情報を処理したり、新しい行動パターンを学習したりする際に、多くのエネルギーを消費する。そのため、できるだけ慣れ親しんだ思考や行動を優先し、省エネで済ませようとする。言ってしまえば、脳は本質的に「怠け者」なのだ。
だが、この「怠け者」という性質は、私たちの祖先が過酷で変化の激しい環境を生き延びるためには極めて合理的だった。慣れた行動を繰り返すことで生存確率を高め、未知の環境に伴う危険を避ける。「変化しない」という選択は、かつては有効な生存戦略だったのである。そしてその名残は、現代社会に生きる私たちの脳にも、色濃く残っている。
有名な経営コンサルタントである大前研一氏は「人間が変わる方法は三つしかない」と述べている。
一つ目は、時間配分を変えること。
二つ目は、住む場所を変えること。
三つ目は、付き合う人間を変えること。
そして、最も無意味なのは「決意を新たにすること」だという。
この言葉は示唆に富んでいる。私たちは意志の力で自分を変えられると信じがちだが、実際には、人は自分を取り巻く環境によって変化していく存在なのだ。
例えば、スポーツジムの入会が最も多い月は一月だとよく言われる。新年を迎え「今年こそはセルフケアを頑張ろう」と意気込む人が多いのだろう。しかし、そこであまりにも大きな目標を掲げてしまうと、脳の「現状維持機能」が働き、挫折を招きやすくなる。脳は、新しい行動を「負荷」や「ストレス」として捉える。そして「今のままでも十分安全だ」「無理に変わらなくても大丈夫だ」と、元の習慣に引き戻そうとする。自己変革を試みたときに感じる強い抵抗感は、意志の弱さではなく、脳の正常な働きなのだ。だからこそ、大切なのは目標の置き方である。










