「引きこもり」へのアプローチ~佐藤 英行からreport~

4人のプラクティショナーが 、月ごとに自分の感じていることやお知らせしたい情報などフェルデンクライスに関することを皆様にお届けしています。

第37号-2019年7月は、佐藤 英行からお届けいたします。2019年8月はサノ ケイコです。お楽しみに。

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「引きこもり」へのアプローチ

今年に入ってから、都内某所の「就労支援施設」でATMレッスンを実施させて頂く機会をもらった。その施設は「発達障害」を持っている方々に、文字どうり「就労の支援」を行なっている。こちらも、そんなことは未経験なので、少々緊張してレッスンに望んだ。。。

施設を利用されている方々の年齢は比較的幅広く、20代から30代の男性が中心であった。参加して頂いた方々は10名。「発達障害」といっても、みんなATMのような「言葉を通じてのレッスン」を理解してもらえるだけのインテリジェンスは持ち合わせていた。

「できるだけわかりやすいレッスン」を選んだが、中には集中力の欠如からか、途中で動きを止めて退席してしまう人や、「動きの感覚」に集中する事なく、ただ単純な「動作」だけを繰り返しているだけの人もいた。しかし終わってみれば「ごく普通のワークショップ」とあまり変わらない印象を受けた。

レッスンの後に「何を感じたか?」をひとりずつ聴いてみたところ、一人の男性が、自分の感覚の変化を訥々と話してくれた。

施設のスタッフの話では、その男性は普段あまり自己表現をしないということだった。

「彼が初対面の人に、自分の意見を話すなんて初めてだ。」と驚いていた。

どんな形であれ、彼は私のレッスンの後に「自分の身体と動きの感覚を感じること」そして「それを言葉にして表現すること」が出来たのだ。これは私にとっても嬉しいことだ。

この施設を利用する人々の多くは、俗に言う「引きこもり」だ。「引きこもり」が問題視されたのは1990年代からと言われている。しかし実際は70年代から少しずつ増加して来たという。ちょうど日本の高度経済成長期の終わり頃や、バブル崩壊前後と一致する。そんな、ある意味で「華やかな時代」に、なんらかの「挫折」や「コンプレックス」を感じて社会生活や対人面で不都合が生じてしまっても不思議ではない。運良く現状から抜け出す『キッカケ』を掴めれば良いが、そうでないと「負の連鎖」にはまってしまうことも考えられる。

実際に今回は「明らかに障害を持っている」と思われる人だけでなく、それこそ「何かの『キッカケ』を掴めなかった、ごく普通の人」に思える人もいた。本来ならば「対象となる個人別の支援プログラムを提供する」のが理想のはずだが、そこまでの「社会的な受け皿」が存在していないのだろう。。。。

今回のことで私は「『自分の身体の感覚』を認識することは、『周囲の環境と関わること』への糸口になり得る」ということを再確認した。

そしてそれが、今回参加してくれた方々にとって、何かの「キッカケ」になってくれれは、これほど嬉しいことはない。

彼らにとって、フェルデンクライスのレッスンは、とても効果的なのだ。。。

フェルデンクライス プラクティショナー  佐藤英行

2019-07-30 | Posted in FK Tokyo 通信, ReportComments Closed 

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