サノ ケイコからreport~「想像力、創造力」
4人のプラクティショナーが 、月ごとに自分の感じていることやお知らせしたい情報などフェルデンクライスに関することを皆様にお届けしています。
第33号-2019年3月は、サノ ケイコからお届けいたします。2019年4月は佐藤 英行です。お楽しみに。
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真ん中で弾いているのが、藤村俊介さんです。
先日N響のチェロ奏者藤村俊介さんの「語るチェロ」という講座に行ってきました。
演奏しながら、どのように弾いているかをお話してくださり、
音を通してどのように表現するかを考えているのがわかり、
とても興味深いお話と演奏でした。
その中で譜面の演奏記号に「速くしないで」と書いてある部分を
どのように演奏するかのお話がありました。
弦を押さえている左手を下の方にスライドさせていくときの速さについてだそうです。
「速くしない」とは、遅くするということなのか? でも遅くとは言っていない。
「速くしない」と書かれているということはどういうことか、
「遅く」とか「ゆっくり」と書かれているより考えることになる。
そこで藤村さんは平坦な音にならないように左手をスライドさせる時に
ゆっくり動かし、最後に少し速さを変化させ、
弓の弾き方にも変化をつけて弾こうと考えたそうです。
私のつたない文章では想像しにくいかと思いますが、
私が興味を引いたのは、「速くしない」ということを
どのように考え、どのような音で表現するかを考えたことです。
フェルデンクライスでも、ATMレッスンでの表現や指示を直接的にしない場合が多いのです。
初め私はなぜそんな遠回りな言い方をするのかが、まったくわかりませんでした。
例えば直接「遅く」といった方がどんなにか、わかりやすいのになあと思っていました。
次第に、なぜそのような言い方で表現するか分かっているつもりでした。
でも、藤村さんのどのように譜面と向き合い、どのように演奏するかを考え、
工夫している過程のお話を聞いて、こういうことだったのかと
初めて気づかされました。
直接的な表現をしないと、ちょっと立ち止まっ
てどういうことなんだろうか?と
考えることができるチャンスがあり、
そのことが学びの過程になるのだなと思いました。
想像力を、そして創造力を膨らませて、
動きを通して自分自身の中の豊かさを目覚めさせてみよう。
プラクティショナー サノケイコ