佐藤英行からのReport-自動販売機化
4人のプラクティショナーが 、月ごとに自分の感じていることやお知らせしたい情報などフェルデンクライスに関することを皆様にお届けするという企画をいたしました。
第2号-8月は、佐藤英行からお届けいたします。9月はなみかわ ももこが担当いたします。
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最近非常勤の職場で「マニュアルを作ってくれ」との依頼を受けることが多い。
どの業界でも「業務についての決まったマニュアルが存在し、それに沿った業務を実行している」という記録を残すこと求められている。
老人介護の世界でも例外ではない。
しかし、我々が扱っているのは「いろいろな障害や、様々なバックグラウンドをお持ちのお年寄り」なのだ。
そんな人たちをマニュアル通りに扱えるのだろうか??
リハビリ業務のマニュアルだけでなく「○○さんの××の仕方を手順化してほしい」という依頼も来る。
確かにそれで介護業務の80%くらいは上手くいくのかもしれない。
「業務をこなすのに忙しすぎるから、簡単で安全な方法が知りたい」とのことなのだろう。
現場では「出来るだけ早く、誰にでも簡単に安全にできること」が望まれている。
「じっくりと考えて結論を出していたら間に合わない」のかもしれない。
それならば80%くらい上手くいく方法論を提示して、それにすべてを押し込んでしまえば、何とかなってしまうということなのだろう。
このような傾向は治療の世界にも垣間みられる。
たとえば「鍼灸」の世界では「特効穴」なるものが良く好まれるのである。
曰く「頭が痛いときには○○のツボが効く!」「腰痛には○○のツボが効果的!」というやつだ。
…しかし、よく考えてみてもらいたい。
人間の身体は「自動販売機」ではないのだ。
「○○を押せば××が出てくる」というほど単純には出来ていない。
そんなプラス・マイナスのような「デジタル思考」で治療ができるほど簡単ではないのだ。
もしかしたら東洋医学が持つ「神秘性」を強調しすぎているだけなのかもしれないが、言ってしまえば「出来るだけ早く、誰にでも簡単に安全にできること」を望んでいるにすぎない。
そんな思考を押し進めてしまえば、それに「外れたもの」は「存在しないもの」として扱われてしまう。
しかし「外れてしまったもの」こそが「解決すべき問題点」であるはずだ。
すべての行動にマニュアルがあり、それに沿って動く「自動販売機」のような存在が望まれる。
もし「自動販売機」になってしまうことで「幸せ」を感じるのなら、それはそれで良いのかもしれない。
そうすることで自分は「満ち足りて、有能で、教育があり、幸福で、創造的だ」と思えるのであれば、不満はないのかもしれない。
しかし、もしもあなたが「これって、なんか違うのかもしれない・・・???」と感じてしまったら、そのときからあなたは「外れてしまったもの」になるのかもしれない。
そんなときは「はたして自分が何をやっているのか?」をもう一度振り返り、自らの思考と行動を一致させることで、ある程度は進む方向が見えてくる。
そんなときこそ私は、フェルデンクライスのレッスンを受けることをお勧めします。きっと「何か」が見えてきます・・・・。
プラクティショナー 佐藤英行