上手くできないことは~サノ ケイコreport~
プラクティショナーが 、月ごとに自分の感じていることやお知らせしたい情報などフェルデンクライスに関することを皆様にお届けしています。第69号ー2022年6月はサノケイコからお届けします。
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先日、フェルデンクライス・メソッドを初めて受けてくださった70代の方のコメントです。
「指示された動きがちゃんとできなかったけど、いいのかしら?」
ちゃんとできなかったと思っても、レッスンを受けた後には
「すっとして歩いている」
家族にもまた自分でも猫背なのを気になさっていましたが、動きをやった後立った時には、周りから見ても綺麗な背中になっていました。
自分では上手くできなかったとしても、何かが起こるところは、いつも思いますが興味深いところです。
一つの動きを意識を変えて様々なやり方で、快適な動き方で動くようなやり方で、イメージしてから動くようやり方でやってみました。
フェルデンクライス・メソッドでは、何も考えずに同じことを繰り返すより、自分がどのようにやっているかに注意を向けながら数回やる方が、何かをもたらすことになります。
YouTubeより「ピタゴラスイッチ」 日常の中にある物を使っているところが面白い。調味料の瓶とかブラシとか装置にどのようなものが使われているかを見るのもたのしいです。
新聞の記事で「ピタゴラスイッチ」を20年間番組作成に携わる方々の舞台裏のインタビュー記事をご紹介します。
佐藤「10年ほど前に、みんなが装置づくりを『うまくなりすぎた』時期がありました。球の動きが滑らか過ぎて安全すぎて、機械みたいで面白くないんです。」
ー確かにつっかえつっかえ進む方が、ひやひやしてみてしまいます。
山本「重たい球を速く動かすと成功率は高まりますが、軽い球がふらつきながらも無事にゴールするからこそ、ぐっとくるんですよね。だから、最初から完璧を狙いすぎにやってます。」
ーピタゴラスイッチを作るうえで大事にしている価値観はなんでしょう
佐藤「世の中や、普通の生活の中に潜んでいる様々な「考え方」を伝えることをめざしています」
山本「何かが「わかった!」という瞬間に私たちが感じる気持ちよさや充実感を、子供たちにも映像を通して感じてほしいです」
ーところでピタゴラ装置は、おもちゃとして商品化しないのですか
佐藤「(略)基本的にお断りしています。やはり家にあるモノで作るのが面白いと思うんです。例えば、本を立てると、それだけで球が転がるレールになります。視点を変えて、本に新しい役割を再発見する。そして実際に球を動かしていくと、失敗もたくさんあります。自分の頭の中では「球ってこう動くものだ」というイメージがあって、それをもとに予想するんですけど、ちょっと粗いんですよ。予想と現実は違う。それに気づいて想像力の解像度を上げていくのが面白いんです」
このインタビュー記事のように、上手くやりすぎると何も考えることなく通り過ぎでしまいます。フェルデンクライスのレッスンの中でもよく「上手くやらないで」という言葉かけをします。なんか上手くいかなくて、あれ?どうしたらいいだろうかとつっかかって何か別のやり方をやってみたり、その時に自分のやっていることをよく観察しようとすると何かを発見するチャンスになります。
ATMレッスンでは、動きの指示を聞いてこう動かすだろとイメージしてから動くと実際やっていることの間にはギャップがあると気づくでしょう。そして少しずつイメージに近づけるよう自分のやっていることを注意深く観ます。こうして得た経験から次第に自分自身の中で何かがわかったと感じるようになるでしょう。
上手くできないことは、できるということにつながることだと思うのです。
プラクティショナー サノケイコ