障害ー自分だけの苦しみ~佐藤 英行report~

プラクティショナーが 、月ごとに自分の感じていることやお知らせしたい情報などフェルデンクライスに関することを皆様にお届けしています。第67号ー2022年4月は佐藤英行からお届けします。

*************************

理学療法士として仕事をする上で、どうしても接することになるのが「障害」だ。かつて障害は「疾病や外傷によって起きた『機能障害』のため『能力低下』が発生し、その結果として『社会的不利』が起こるもの」と定義されていた。しかし現在では、障害が起こる要素として、性別や年齢、性格などの「個人因子」や、家庭や職場、学校及び社会そのものを含んだ「環境因子」にも着目し、日々の生活行為や社会参加を含めた広い概念へと発展している。

つまり「身体機能や精神機能に問題がなくとも、日々の生活や社会参加に制限や制約が生じた状態は障害である」と言うことだ。しかし我々にとって「障害」となるものは、そればかりではない。

フェルデンクライスのトレーニングプログラムで「障害について」のレクチャーを受けたことがある。そのレクチャーでは「自分の意思と自分の行動との間にギャップがある場合に『障害』が発生する」と述べられていた。さらには「意思と行動を一致させるためには、自分の中にある抽象的なアイディアを見つけて、それを『自己イメージ』の中に取り込み、その『自己イメージ』を自分の身体を使って、周囲の環境に表現することが必要」とも。

フェルデンクライス メソッドで言う「障害」とは「自分の意思を表現ができずに意思と反する行動をとってしまうこと」を意味する。自分の意思に反する行動をとってしまうこと、またはそうせざるを得ない状況になることは、確かに存在する。そう考えると、痛みや身体機能、精神機能に問題がないとしても、さらには生活行為や社会参加にも何ら問題がないとしても「障害」は発生しうる。そして、このような理由で発生する「障害」は、ほかの人からはあまり理解されることのない「自分だけの苦しみ」となってしまう可能性がある。
しかし、そんな「自分だけの苦しみ」も、解決の糸口がないわけではない。自分の行動を制約してしまう要因を見つける方法は存在するのだ。

Dr.モーシェ フェルデンクライスは Lessons from Alexander Yanai #86 の中で「人はそれぞれ、自分の身体を使えていないために起こる、それぞれに異なった問題を抱えている。その問題は、我々が生きていくことの邪魔をする。しかし『身体のどこを動きと結びつけることができるのか?』『 どんな感覚を動きと結びつけることができるのか? 』を観察すれば『身体のどこが活動的なのか?』『 なにが苦しまなければならないような邪魔をしているのか?』 を知ることができる」と述べている。注意深く自分の動きを観察すれば、自分を苦しめている要因を見つけることができるのだ。

ある意味で我々は「自分だけの苦しみ」を抱えながら生きている。
それを解決する最良の方法は、フェルデンクライス メソッドであることは、言うまでもない。

フェルデンクライス プラクティショナー 佐藤英行

2022-04-27 | Posted in FK Tokyo 通信, ReportComments Closed 

関連記事

Menu