語学学習のすすめ~佐藤 英行report~

プラクティショナーが 、月ごとに自分の感じていることやお知らせしたい情報などフェルデンクライスに関することを皆様にお届けしています。第81号ー2023年7月は佐藤英行がお届けします。

************************

先日、奥多摩へのツーリングの途中に「東京最西端の食事処」とされる店に立ち寄った時のこと。。。
外国人の男女2人と日本人の男女2人の、4人のグループが店に入ってきた。全員が人気メニューの「ヤマメ定食」をオーダーしていた。

私は「4人はお互いに友達同士なのだろう」と思った。「海外から来た友達を地元の人気の店に連れて来たのだろう。日本人のふたりは英語を話せるのだろう」と…。しかし彼らはスマートフォンの翻訳アプリを使ってコミュニケーションをとっていた。どうやら彼らは新型コロナウイルスの規制が緩和された事により増加した外国人観光客を扱っている業者の方々のようだった。


便利な世の中になったものだ。今はそれほど語学を勉強しなくても、スマートフォンを使って海外の方々とコミュニケーションが取れる時代になったのだ。しかし、語学を学ぶメリットは、コミュニケーションに限ったことではない。「 2つの言語を話すバイリンガルの人々は、加齢などによる脳機能の低下を遅らせることができ、認知症になりにくい」との研究調査が、海外で続々と発表されているのだ。例を挙げると。。。

#1.カナダのセント・マイケルズ病院 の脳研究チームは、 アルツハイマー病患者の データーをもとに、病気の進行や認知能力がほぼ同レベルにある患者をバイリンガルとモノリンガルに分けて各20名ずつ集め、彼らの脳をスキャナーにかけて調べた。その結果、バイリンガル患者の脳はモノリンガル患者の脳よりも著しく萎縮しているにもかかわらず、モノリンガル患者とほぼ同等のレベルの認知能力を維持していたことが判明した。つまりバイリンガルの脳はアルツハイマー病による脳機能の低下が進行しないように何かによって保護されていると考えられる。

#2.米国ケンタッキー大学のレキシントン病院では、バイリンガルとモノリンガルの高齢者110名を対象に注意力・思考力・認知能力のテストを行ったところ、バイリンガルの人はモノリンガルの人よりも思考力が高く、また色や形を識別する能力も優れていたと言う。 彼らの脳内で何が起きているのかをスキャナーで調べると、モノリンガルの脳はテストの質問に答えるために懸命に頑張っていたが、バイリンガルの脳はまるで若い人のように余裕を持って機能していたと言う。

つまり『バイリンガルの脳は、日常的に相手の状況に応じてどちらの言語を使うか?を選択し、使わない方の言語を抑制する、と言う複雑な認知活動をしている。この「2つの言語を使う」と言う複雑な認知活動を日常的に長年繰り返すことによって、加齢などによって脳の認知機能が低下したときに、それを補う神経を発達させたりする「cognitive reserve (認知的予備力)」が高められ、それが機能低下の開始年齢や低下速度に個人差を生じさせている』という事だ。

語学習得について、Dr.Moshe Feldenkrais は著書「フェルデンクライス身体訓練法」の中で以下のように述べている。
『我々の自己イメージは、実際に使われた脳の細胞群のみによって作られるものだから、秘められた可能性よりもどうしても小さいものになる。さらに細胞の形態やそれらの結合状態の多様さが実際の細胞の数量よりも重要なのである。たくさんの言語を習得した人々は、使用する細胞の数も細胞結合の数も多いのである。 世界中のどこでも共同体の中の少数民族の子供たちは少なくとも2カ国語を知っている。彼らの自己イメージは、母国語しか知らない人に比べ、わずかなりとも可能性の限界に近づいていると言える。』

要するに我々の脳は「使ってなんぼ!」なのだ。語学学習に限らず、さまざまな「複雑な認知活動」にチャレンジして「学び」を続けるべきなのだ。たとえ脳細胞の数が減ってしまったとしても、その結合状態を多様化することで、認知機能が維持できるのだから。

ちなみに私も、今さらではあるがその翻訳アプリを使って英文を訳してみた。かつて巷に存在していた「翻訳ソフト」と比べると、かなり精度が上がっているように思える。しかし日常会話レベルならともかく、ある程度専門性の高いものになると、まだ精度が低いと言わざるを得ない。。。

私は、少し苦労をしてでも学習を続けて、自分自身で英文を理解していこうと思う。そして、この記事を読んでくださっている方々にも、今からでも語学学習をはじめてみる事をおすすめする。そうする事で、自身の世界が広がるのはもちろん、将来的に認知症の予防に役立つかも知れないのだから。

Enjoy Being

フェルデンクライス プラクティショナー 佐藤英行

 

参考資料
「バイリンガルが認知症予防に? 多言語教育がもたらす将来の健康」
https://bilingualscience.com/english/%E5%B0%86%E6%9D%A5%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%AB-%E3%80%9C%E4%BA%8C%E8%A8%80%E8%AA%9E%E4%BD%BF%E7%94%A8%E3%81%8C/

「バイリンガルの高齢者は認知症になりにくい!」
https://project.nikkeibp.co.jp/atcl21f/gdn/yabe/2016102501/

 

2023-07-31 | Posted in FK Tokyo 通信, ReportComments Closed 

関連記事

Menu