動きと思考の連鎖 ~佐藤 英行report~

プラクティショナーが 、月ごとに自分の感じていることやお知らせしたい情報などフェルデンクライスに関することを皆様にお届けしています。第73号ー2022年10月は佐藤英行からお届けします。

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フェルデンクライスのレッスンを受ける目的はさまざまだ。しかし多くは「痛み」や「動きにくさ」の改善を望む方々がレッスンを受けに来る傾向があるようだ。

あるセラピスト氏から「私ならフェルデンクライスのレッスンよりも、もっと早く結果を出すことが出来る」と言われたことがある。確かにそうなのかも知れない。しかし、早く結果を出すことは、フェルデンクライスのレッスンの真のゴールではない。

Dr.モーシェ フェルデンクライスは著書「EMBODIED WISDOM」の中で『精神機能と運動機能は個人の中で『ひとつのもの』として存在する。その二つの機能は別々のものではなく、同じものの違う側面を表している。思考には精神的な過程を支える肉体的な機能が欠かせない。肉体的な機能の支えがなくて行われる精神的な行為を見つける事は難しい。』と述べている。つまり「痛み」や「動きにくさ」の原因が、思考とワンセットになっている身体の動きや筋緊張に由来するとしたら、思考の変化がなければ「痛み」や「動きにくさ」は解消されない。またいつも同じような思考パターンに陥っている場合には、その思考を誘発する「動き」が存在する可能性がある。その場合は「動きを変えなければ思考は変わらない」と言うことになる。

この「思考と動き」の負の連鎖は、気づかないうちに蓄積してしまう。しかし、それに気づくことができる人は少ないのかも知れない。そして多くの場合、いちいちそんなことを解析している時間はない。だから「とりあえずの結果」を得て「それで良し」としてしまうのだろう。

フェルデンクライスのレッスンに、ゆっくりと快適な動きが求められるのは、不必要な筋緊張をリセットするためだけではなく、その筋緊張と表裏一体になっている「思考」も一緒にリセットするためだ。僅かな筋緊張の変化により、同じ動きがより動きやすく、より負担の少ない動きへと変わる。その新しく変わった動きは、邪魔をしていた筋緊張と表裏一体であった「思考」とも無縁のものとなり、スムーズで快適な状態を保つことができる。また、ネガティブな思考に伴って発生している筋緊張があるとしたら、それを解消することで、動きが変わるだけでなく、ネガティブな思考パターンからも解放される。さらに、快適で心地よいという思考と快適な動きとをワンセットにすることができたら、日々の生活は大きく変わる。このことが、フェルデンクライスメソッドが目指すゴールのひとつなのだ。

もちろん、それなりの時間はかかる。しかしそれ以上に、やってみる価値は十分にある。

 

Enjoy Being

フェルデンクライス プラクティショナー 佐藤 英行

 

 

2022-10-27 | Posted in FK Tokyo 通信, ReportComments Closed 

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