ブルースリーの遺言 ~佐藤 英行report~

プラクティショナーが 、月ごとに自分の感じていることやお知らせしたい情報などフェルデンクライスに関することを皆様にお届けしています。第70号ー2022年7月は佐藤英行からお届けします。

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誰にでも「強く影響を受けた人物」が、1人はいるのではないだろうか??

私の場合はDr. モーシェ フェルデンクライス・・・ではなく、ブルースリーだ。生意気ざかりの小学生だった頃、「燃えよドラゴン」を観てしまったがために、私の人生は変わってしまった。

ブルースリーの魅力は派手なアクションだけではない。彼が残した言葉の造詣の深さこそが、彼のもうひとつの魅力なのだ。例えば燃えよドラゴンの中での有名なセリフ「考えるな! 感じろ!」は、世界中の多くの人々に影響与えた。しかしこのセリフには 続きがある。

全文を紹介すると以下のようになる。

Don’t think, feel !
It’s like a finger pointing away to the moon.
Don’t concentrate on the finger, or you will miss all the heavenly glory.
『考えるな、感じろ!
それは月を指差すようなものだ。
指に集中するんじゃない。その先の栄光が得られないぞ!』

・・・まるで禅問答のようだ。。。
しかしこの言葉はフェルデンクライス メソッドの真髄を語っているようにも思える。

レッスンを受ける目的はさまざまだ。痛みをなくすため、パフォーマンスを向上させるため、等々。そのためにフェルデンクライスメソッドでは「組織化」という手段を用いる。痛いところや効率の悪い動きを改善するのではなく、それらを含めた全体像を見直して自分自身を再構築していくのだ。そのためにレッスンでは非習慣的な姿勢の中で、快適だと感じられる動きを追求する。何が本当に快適なのか?は、我々の身体が一番よく知っているのだ。しかし残念ながら、この方法ではすぐには結果を得られないことがある。

レッスンを受けに来る方々は「良くなること」を期待する。だからレッスンが終わった後に「私の〇〇の痛みは、なくなったのだろうか?」「私の〇〇の動きは、変わったのだろうか?」と考えるのは仕方のないことかもしれない。しかし結果ばかりを探っていると「良い状態になるための組織化」を見失ってしまう。自身を組織化して本当に良い状態を得るためには、それなりのプロセスと時間が必要だ。それを無視してしまうと、それこそ「その先の栄光」を得ることはできない。

もちろん、早く結果を出す方法もある。痛みへの対策や、問題となる動きの改善のみを取り入れることで、現状を変えることは可能だ。しかし組織化されていない状態でパフォーマンスを上げようとすれば、いろいろなところに無理が生じる。それを補うためには、また新たな対策が必要となる。ないものを手に入れるための「足し算のトレーニング」は「終わりのないマラソン」なのだ。

ブルールリーの言葉を借りれば

It’s not the daily increase but daily decrease. Hack away at the unessential.


『大事なのは、日々、増やすことではない。減らすことだ。

本質的でないものは切り落とせ。』

ということだろうか…。

結果ばかりを求めると、目標を達成できなくなるばかりでなく、本質さえも見失ってしまう。大切なのは、気づいた変化をそのまま受け入れて、必要なものを自分のなかに取り込み、必要でないものは潔く手放すことなのだ。

ブルースリーがフェルデンクライスメソッドを実践していたという話は聞いたことがないが、彼もまた、Dr.モーシェ フェルデンクライスと同じ『なにか』を見つめていたのかもしれない。。。

・・・今年、2022年の7月20日はブルースリーの50回忌に当たる。
私自身、ブルースリーの歳(享年32歳)を追い越してかなりの年月が経つ。しかし、いまだに私は彼の背中を追いかけている。

改めて彼の残した言葉を反芻して、彼の哲学を追求してみようと思う。

Enjoy Being

フェルデンクライス プラクティショナー 佐藤英行

2022-07-16 | Posted in FK Tokyo 通信, ReportComments Closed 

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