どうやって改善できるのだろうか ~サノ ケイコreport~

プラクティショナーが 、月ごとに自分の感じていることやお知らせしたい情報などフェルデンクライスに関することを皆様にお届けしています。第66号ー2022年3月はサノケイコからお届けします。4月は佐藤英行からお届けします。

*************************

今読んでいる本でフェルデンクライスとの共通点を感じたので、ご紹介したいと思います。

本のタイトルは「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」著;川内 有緒(かわうち ありお)

白鳥 建二さんについて説明すると、51歳 2歳のころから片目があまり見えず、小学生三年生で盲学校に転校。

白鳥さん自身は、目が見えないという状態が普通で”見える”という状態がわからないので、他人が思うような”大変”とか”かわいそう”と言われるたびに、違和感を感じていたそうです。

ある時、気になる女性とのデートでレオナルド・ダ・ヴィンチの「人体解剖図展」を見にいったのをきっかけに盲人らしくないので面白いと思い、その後、沢山の美術館へ行くことになります。

見える人と一緒に行ってもらい、どのような絵かを言葉で表現してもらい、白鳥さんはその絵を言葉から見ます。

白鳥さん情報はこれくらいで、もっと詳しいこと知りたい方は、本を読んでみてください。

作者の川内さんと白鳥さん、友達のマイティさんと3人で「フィリップ・コレックション展」を見にいった時に、

ピカソ「闘牛」を見えている川内さんとマイティが言葉で説明するが、見えている2人がカオスにはまっていくのを聞いている白鳥さんは、混乱している二人の様子を面白がっています。

白鳥さんがどう考えているかの部分を抜粋します。ーーーー

作品の背景に精通しているひとが披露する解説は、『一直線に正解にたどり着いてしまってつまらない』という。

ひとつの作品でもその解釈や味方にはいろんなものがあり、その余白こそがいいらしい。

「俺にとっては、みんなで見る、話すというプロセスの中で意味を探ったり、発見していくのが面白い。」

ー彼は「わかること」ではなく、「わからないこと」を楽しんでいるのか。

もう一つは、白鳥さんに絵を言葉で説明する際の、作者である川内さんと友達のマイティさんと、同じ絵を見ているが…。

同じ絵を見ているのに、なぜここまで印象が異なるのか、ちょっと考察してみたい。

それはどうも「見る」ことの科学と関係があるようだ。視覚とは「目」や視力の問題だと考えられがちだが、実際は脳の問題だということである。

その昔、「ものを見る」という行為は、現代のスマホで写真を撮る行為と同じくらいシンプルなことだと考えられていた。そこにある物体を視界にいれれば万事OK! はーい、バシャ!というわけ。

しかし近代科学の発展とともに、徐々に「見ること」の複雑さが明らかになってきた。ものを見るうえで不可欠な役割を果たすのは事前にストックされた知識や経験、つまり脳内の情報である。わたしたちは、景色でもアートでもひとの顔でも、すべてを自身の経験や思い出をベースにして解析し、理解する。

フェルデンクライス・メソッドのATMレッスンは、動きの見本を見せずに言葉だけで動きを伝えます。

モシェがなぜこのような方法を選んだのか、不思議でした。その理由としてこの抜粋した部分をヒントに考えられるかもしれないと思います。

レッスンでわたしたちプラクティショナーが、どのような絵=動きかを言葉で細かく部分の動きを指示し、最終的に一つの完成した絵=連動した動きになります。

そして「ものを見る」の抜粋であったのと同様に、言葉だけを聞いて動きを行う時には、今までの経験、知識といったものをベースにして動きをします。ですから、一人一人がどのように感じるかには違いが起こります。それでも、良い動きになると皆同じように動いているようになります。でも違うのです。私にとって皆さんの動きを見ていて、そこがとても面白いところなんですが。

ATMレッスンで、自身の経験がベースになっているのなら、どうやって改善し、向上できるのか?と、私は思っていました。

レッスンでは普段やり慣れない動きが多く、行う時に注意深くなり、いつものやり方でやるのが難しい状態になります。

また、フェルデンクライス・メソッドには2つやり方があり、言葉から自分で動くATMレッスンとプラクティショナーの手によるFIレッスンがあります。FIレッスンでは、自分ではまだ気づいていない動きの関連を手によって体験することができます。その人にとって新たな経験ができるわけです。この2つのやり方の似ているけど全く違ったやり方で動き、感覚、感情、思考を豊かにしていきます。

大人になると、色々な経験や知識によって制限されたイメージややり方で、分かっていると思っていないでしょうか。

でも白鳥さんのように見えない絵を言葉で見る時のように、『一直線に正解にたどり着いてしまってつまらない』・「わかないこと」を楽しむことが神経系を刺激し、改善できる方法だとモシェは考えたのではないだろうか。

プラクティショナー  サノケイコ

 

2022-03-31 | Posted in FK Tokyo 通信, ReportComments Closed 

関連記事

Menu