感覚の記憶は、環境が変わっても残る? ~サノケイコreport~
プラクティショナーが 、月ごとに自分の感じていることやお知らせしたい情報などフェルデンクライスに関することを皆様にお届けしています。
第64号-2021年12月はサノケイコからお届けいたします。2022年1月は佐藤英行からお届けします。
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民間人も宇宙旅行に行けるようになるとは、びっくりしています。
2021年5月に3回目の宇宙飛行から帰還した野口 聡一郎さんが「感覚で宇宙をつかむ」ことを重視しているという。
11月の朝日新聞の記事で、野口さんの重力に関する興味深い記事を抜粋して、ご紹介しようと思います。
―宇宙について、なかなか想像が及ばない大きな問題は「無重力」(微小重力)です。
「確かに「重力がない世界で何が起きるか」は一番大きく根源的な問題ですね。(中略 無重力が人間の存在にどう影響し、社会規範をどう変えるか。について研究をしたそうです)
「地上でも心が安定するポーズである座禅を、無重力空間で組んでみたのです。人間は聴覚で重力の基準をつかみますが、無重力ではそれが消え、さらに目を閉じて視覚情報も消してみる。感覚を遮断したらどうなるのか、の実験でした」
ーどうなりましたか
「そもそも座禅の姿勢になるのが難しい。無重力では両足を引き寄せ、手で固定していないといけないですから。記録映像を見ると、体が右斜めに上に浮き、しばらくすると、頭の右側が壁にぶつかりました。頭がぶつかったとき、身体には重力のある世界の記憶があったからです。」
「船外活動で真っ暗だと、手や足が伸びているのか、曲がっているかが感覚として不明になりますね。ふだんは意識せずとも、人間の筋肉が重力を感じている。それが、消えるからです。」
ー「上・下」や「縦・横」が消える世界を想像できません。
「頭が上で、足が下と思いたい気持ちは残ります。面白いのは機械は瞬時に『無重力仕様』に切り替えられますが、人間の感覚はそうはいかないということです。…」(11月朝日新聞記事より)
日常の生活では重力を意識して感じることはほとんどないけれど、聴覚や筋肉で重力を感じているのですね。
違う環境だからわかることがあるのですね。
重力のある世界での空間の上下左右前後の感覚が、無重力でもその記憶が残っている、というのは、とても興味深いことです。
環境が変わっても自分の中にある感覚の記憶が残っているのなら、その感覚をどんどんより良いものにし続けて、どのようにも適応できるようにしておくことができるのではないでしょうか。
フェルデンクライスでは、重力と骨格と脳を使っています。
重力という当たり前の状態になんの疑問もなく物がテーブルの上に置かれていることを見ているし、私たちは床に寝ころんだり、転んだり、座ったり、立ったりでき、更には重力があるからより高く飛びたくなるのかもしれないですね。
この地球で生きている限り、重力に対してどうすれば楽に自分自身を使うかを学ぶことを改めて考えてみることが必要ではないだろうか。フェルデンクライスの動きを通して、重力と骨格と脳を使ってみましょう。
モシェの身体訓練法から良い姿勢について
「骨格構造が引力に抗って働き、筋肉がいつでも動けるよう自由になっていればいいのだ。
そのように、神経系と筋肉骨格組織が重力の作用のもとでひとつなって働けば、骨格は引力の影響にかかわらずエネルギーを浪費せずに身体を支えられることになる。」